|
|
旧京都高等工芸学校本館(京都工芸繊維大学3号館) (京都市左京区) Former main building of Kyoto Handicraft High School |
|
旧京都高等工芸学校本館(3号館) | 旧京都高等工芸学校本館(3号館) |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() 正門 ![]() 正門 ![]() 正門、「京都工芸繊維大学」のプレート ![]() 正門、門衛所 ![]() 正門、門衛所 ![]() 正門、門衛所 ![]() 正門、門衛所 ![]() 本館、東側 ![]() 本館、東側 ![]() 本館、東側、正面玄関 ![]() 本館、東側、正面玄関 ![]() 本館、東側、正面玄関 ![]() ![]() 本館、東側、正面玄関 ![]() 本館、東側、正面玄関 ![]() 本館、東側、正面玄関 ![]() 本館、東側、正面玄関 ![]() 本館、東側、正面玄関、「登録有形文化財」のプレート ![]() 本館、東側 ![]() 本館、東側、スクラッチタイル貼 ![]() 本館、北側 ![]() 本館、北側 ![]() 本館、南側 ![]() 本館、南側 ![]() 本館、南側 ![]() 本館、南側 ![]() 講堂、南側 ![]() 倉庫、東側 ![]() 倉庫、南側、塔屋 ![]() 倉庫、北側 ![]() 倉庫、北側 ![]() 倉庫、北側 ![]() 倉庫、北側、スクラッチタイル貼 ![]() 倉庫、南側 ![]() 倉庫、南側 ![]() 倉庫、南東角、コーニス ![]() 自動車庫 |
京都工芸繊維大学の西部構内に、大学前身の一つになる旧京都高等工芸学校本館(きゅう-きょうと-こうとう-こうげいがっこう-ほんかん)が残されている。 近代のモダニズム建築の先駆といわれた建築家・本野精吾が設計した。 ◆歴史年表 近代、1902年、京都高等工芸高校(左京区吉田下阿達町、現在の京都大学吉田キャンパス内)が開校した。 1930年、東大路通拡幅のために、松ヶ崎へ移転する。本館・講堂が竣工される。 1931年、ほかの建物が竣工した。 現代、1949年、京都高等工芸学校と京都繊維専門学校が統合され、京都工芸繊維大学が発足する。 2008年、3月、旧京都高等工芸高校の本館・講堂などは国の登録有形文化財に選出された。 ◆本野精吾 近代の建築家・本野精吾(もとの-せいご、1882-1944)。東京生まれ。読売新聞社創業者・2代目社長・本野盛亨の5男。暁星中学校、第一高等学校を経て、1903年、東京帝国大学工科大学建築学科に入学した。1906年、大学卒業後、三菱合資会社地所部(現・三菱地所)の技師になる。三菱12号館の設計に関わった。1908年-1943年、京都高等工芸学校(現・京都工芸繊維大学の前身)教授・武田五一の招きにより、同校図案科教授になる。1909年-1911年、ヨーロッパに留学し、ドイツ人建築家・ベーレンス(1868-1940,Peter Behrens)設計のAEGタービン工場(1909)、モダニズム建築に影響を受けて帰国した。1914年、西陣織物館を初設計する。その後、ドイツに留学した。1918年、京都高等工芸学校の学科長になる。1927年、京都で結成された「日本インターナショナル建築会」(同人は上野伊三郎、石本喜久治、中尾保、伊藤正文、新名種夫)に参加する。関西の国際様式の中心人物になる。武田五一はその作風を批判している。1944年、従三位勲二等を叙された。61歳。 機能性・合理主義を標榜し、日本のモダニズム建築の先駆として知られた。新構造体(鉄骨・鉄筋コンクリート)を使用し、意匠は抽象的な面・線を追究した。川崎造船デザイン顧問になり、船室、家具、舞台などの設計もした。エスペランティストとしても知られ、ローマ字普及、広告印刷物にも関わった。絵も描き、京都での西洋音楽普及にも尽力した。 主な作品に、西陣織物館(現・京都市考古資料館、1914) 、京都高等工芸学校自習室(1924)、自邸(1924)、旧鶴巻邸(現・栗原眞純邸 、1929)、旧京都高等工芸学校本館(現・京都工芸繊維大学3号館、1930)、フルーツパーラ八百文(1931)、橘丸などの客船の船内装飾 も手掛ける。 ◆建築 旧京都高等工芸学校本館・講堂(現・3号館)、倉庫、自動車庫(現・プラザKIT)、正門・門衛所(現・東門)が建てられている。1930年-1931年に竣工した。いずれも、基本設計を担当したのは京都高等工芸学校図案科教授・本野精吾による。文部省営繕課が実施設計を行う。2008年3月、国の登録有形文化財に選出された。 ◈「本館」(登録有形文化財)は、西部構内南東隅に、東面して建てられている。1930年に竣工した。2003年に改修されている。 平面は背面(西側)に両翼を伸ばし、E字形になっている。正面玄関、ポーチ(入口の屋根付の両側面の開いた部分)は天井がガラス張りになっている。扉はアール・デコ(1910年代-1930年代にフランスを中心に流行した美術工芸の様式、単純・直線的な意匠)になる。正面奥(西側)中央に、講堂部を突き出している。 外観は、モダニズム意匠に特徴がある。外壁は、茶色のスクラッチタイル貼の全面貼りになる。当初は打ち放しコンクリートの予定だった。北面・南面の2、3階は薄く張出され連続窓になっている。スチールサッシの横長窓が廻された。窓ガラスの組子には、アール・デコ様の装飾が施されている。内部は前面玄関に入口ホールがある。右側に初代校長・中沢岩太、左側には2代目校長・鶴巻鶴一の胸像が置かれている、前面に管理部門、両翼部分に教室、1階に学部長室などがあった。 鉄筋コンクリート造3階建、陸屋根、建築面積2251㎡。 なお、初期案は、1927年の本野らの日本インターナショナル建築会による第1回建築展覧会に出品された「或る学校建築への草案」になる。草案では正面にも横長連続のガラス窓が巡らされていた。 ◈「講堂」は、本館の背面(西側)中央にあり、1930年に竣工している。1964年に屋上に1階部分を増築した。2003年には内部を全面改装した。 本館とは渡り廊下(長さ4m)で繋がる。内部は二層吹き抜けで、プロセニアム・アーチ(劇場の舞台と客席を区切る額縁状の構造物)を備えていた。 ◈「倉庫」(登録有形文化財)は、本館の南翼の南にある。北面している。1931年に竣工した。1964年に移築されている。 スクラッチタイル貼で、北東隅部に階段、屋上に塔屋がある。北面と南面に柱形を現し、壁面頂部にコーニス(外壁上端、屋根庇の下、天井と壁の境などに置かれる水平の細長い突出部)を廻す。窓には内側に鉄扉を付ける。 正面10m、奥行8m。鉄筋コンクリート造2階建、陸屋根造、建築面積80㎡。 ◈「自動車庫」(登録有形文化財)は、本館の北東方、中央西門の南にある。敷地外周沿いに南東面して建つ。1931年に竣工した。 スクラッチタイル貼で、東面・西面北端に張出しを設ける。水平線を強調した庇、各部軒の意匠に特徴がある。 平面規模は正面5.1m、奥行5.5m、鉄筋コンクリート造平屋建、陸屋根造、建築面積30㎡。 ◈「正門」(登録有形文化財)は、西部構内東南隅部に位置する。1931年に竣工した。 石貼で、東に脇門、西の門衛所寄りに通用門を開く。 コンクリート造門柱2基、間口5.4m、左右通用門付。 ◈「門衛所」(登録有形文化財)は、正門の西寄りに付随している。1931年に竣工した。スクラッチタイル貼で、平面は五角形であり、宿直室になっている。見張り室、西側に台所、便所などを備えた。 鉄筋コンクリート造、平屋建、陸屋根造、建築面積30㎡。 ◈「京都高等工芸学校造形実習室」は、現存していない。1924年7月に本野清吾の設計により竣工した。京都帝国大学の西側(現・西部構内)に建てられていた。 建築技師・建築家・中村鎮(1890-1933)が発明した、「中村式鉄筋コンクリート・ブロック構造(中村式鉄筋コンクリート構造/NRCブロック/鎮ブロック)」を本野が使用した初例になる。外観は直方体であり、壁はモルタル仕上げだったと見られている。 ◆京都工繊大学 京都工芸繊維大学は、旧制の2つの専門学校が前身になっている。 近代、1899年に、「京都繊維専門学校」が農商務省京都蚕業講習所として設立された。1914年の管制改正に伴い「京都高等蚕糸学校」に改称される。1944年に「京都繊維専門学校」になった。 他方、1902年に「京都高等工芸学校」(現在の京都大学吉田キャンパス内)は、文部省直轄学校管制により設置された。1930年に東大路通拡幅に伴い、現在地の松ヶ崎に移転する。1944年に、「京都工業専門学校」に改称されている。 1949年に、国立学校設置法の施行により、2校が統合して京都工芸繊維大学が発足した。 ◆記録映画 本館工事(1928-1930)を撮影した記録映画「新校舎の建つまで」(16㎜フィルム、16分)が残されている。 撮影は京都高等工芸学校助教授・山崎實(勝弘)で、専門は写真・色彩学だった。すべの作業が人力、馬車、トロッコで行われている。 *内部は通常非公開 ❊原則として年号は西暦を、近代以前の月日は旧暦を使用しています。 ❊参考文献・資料 ウェブサイト「貴重な文化財建造物を後世に継承していくために-京都工繊大学 kit news vol.17 2008.3」、『建築家 本野精吾展』、『京都市考古資料館と建築家 本野精吾』、ウェブサイト「文化庁 文化財データベース」、『京都の洋館』、『京都の近代化遺産』、『関西のモダニズム建築』、『京都大事典』、ウェブサイト「コトバンク」 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
![]() |
|
![]() ![]() ![]() |
![]() ![]() ![]() |
![]() |
|