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松花堂遺蹟圓乗坊跡 (京都府久御山町) Site of Enjobo Temple |
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松花堂遺蹟圓乗坊跡 | 松花堂遺蹟圓乗坊 |
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![]() 三宅安兵衛の遺志を継ぐ石標「松花堂遺蹟圓乗坊」 ![]() ![]() 三地蔵尊 ![]() |
久御山町佐山(さやま)の住宅地に小さな祠がある。3体の石仏の地蔵尊が祀られている。傍らに商人・三宅安兵衛の遺志を引き継ぐ「松花堂遺蹟圓乗坊(しょうかどう-いせき-えんじょうぼう)」と刻まれた石標が立つ。 かつてこの地に円乗坊という広大な境内を有した寺院があり、山号は松光山迎接院西方寺(さいほう-じ)と称した。 真言宗憲源派(単立寺院)であり、本尊は阿弥陀如来を安置していた。 ◆歴史年表 平安時代、806年、円乗坊は創建された。ほか境内に4坊があった。(寺伝) 鎌倉時代、1288年、如一により中興される。 室町時代、天文年間(1532-1555)、荒廃した。4坊は廃され、円乗坊のみになる。 江戸時代、1630年、検地に際して、淀城主・松平定綱により除地とされた。 現代、1978年、岡山県の明本寺(みょうほん-じ)と円乗坊は合併になり、円乗坊は廃寺になった。 1979年、周辺の宅地開発に伴い消滅する。 ◆如一 鎌倉時代後期の真言宗の僧・如一(?-?)。詳細不明。1288年、円乗坊を中興した。 ◆三宅 安兵衛 江戸時代後期-近代の商人・三宅 安兵衛(みやけ-やすべえ、1842-1920)。男性。初名は安治郎。若狭国(福井県)小浜の生まれ。父・陶器業「吉文字屋」・三宅清治郎、母・畑田つや。1850年、父没後、母とともに畑田家に身を寄せた。 1852年、京都五条の木綿商・井筒屋甚兵衛に奉公に入る。1857年、1864年の大火で店は類焼する。大坂の大菱屋喜助と連携し、京都で博多織を販売し井筒屋を救った。1867年、独立し、四条烏丸に博多織の京都での販売を独占し成功した。1869年、斎藤ゆか子と結婚し、3男2女を産む。その後、店は幾度か移転し、1882年、六角通高倉西入に移る。還暦後、隠居し京都周辺の名所旧跡を巡る。 1919年、長男・清治郎に金1万円を託し、「京都のために公益公利のことに使用せよ」と遺言した。78歳。 安兵衛は生前に石清水八幡宮・平野神社などに標石を立てている。安兵衛の没後、長男・清治郎は父の遺志に従い、京都府下に400基の史跡・名所の案内の石標を建立した。 墓は金地院(左京区)にある。 ◆円乗坊 円乗坊は、佐山の北東部にあった。 山号は松光山迎接院西方寺円乗坊と称した。真言宗憲源派(単立寺院)であり、石清水八幡宮(八幡市)の滝本坊末だった。本尊は阿弥陀如来を安置した。境内は東西47間、南北56間あり、本堂は梁間2間、桁行2間、瓦葺だった。(「佐山村社寺明細帳」、1867)。最盛期には300石を有していた。 平安時代前期、806年に、円乗坊は創建されている。境内にはほか4坊(光成坊・乗坊・円蔵坊・新坊)があった。 鎌倉時代後期、1288年に如一により中興される。室町時代後期、天文年間(1532-1555)に荒廃し、円乗坊のみになる。江戸時代前期、1630年に検地に際して、淀城主・松平定綱により除地とされた。 現代、1978年に曹洞宗・明本寺(みょうほん-じ)(岡山県新見市)と合併になり、円乗坊は廃寺になる。1979年に周辺の宅地開発に伴い、創建以来1173年の歴史は消滅した。 ◆墓 墓地の10基の墓石は、久御山町の大松寺(だいしょう-じ)に移された。 ◆三宅安兵衛の石碑 近代、1920年の三宅安兵衛の没後、長男・清治郎は、父が生前、旅行先で案内表示が少なかったことを残念がっていたこと、石清水八幡宮などに参詣人のための石標を立てていたことから、父の遺志を継ぎ道案内のための石標を立てることを思い立った。 1921年-1930年に、清治郎は京都の名所・旧跡に石標を設置し、 石には「稟(ひん、申し上げる)京都三宅安兵衛遺志建之」と刻んだ。京都市内のほか、府下の八幡市、宇治市、田辺町、精華町、井手町、山城町、加茂町などに400基ほどを立てた。 久御山町にも、当時の名所・旧跡地などに12基の石標が確認されている。多くは1928年に立てられている。「松花堂遺蹟圓乗坊」の石標はその一つだった。その後、石標の一部は損傷し、再建・移設なども行われている。なお、一部の石標についてその後の検証により、史実とは異なるとみられる場所に立てられたものもある。 ❊年号は原則として西暦を、近代以前の月日は旧暦を使用しています。 ❊参考文献・資料 『京都府の地名』、「くみやま文化・歴史ガイド 久御山」、『京の石碑ものがたり』、ウェブサイト「コトバンク」 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
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