命婦稲荷社・鉄輪社・鉄輪井 (京都市下京区)
Myobuinari-sha Shrine,Kanawa-sha Shrine
命婦稲荷社・鉄輪社・鉄輪井 命婦稲荷社・鉄輪社・鉄輪井 
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「鉄輪跡の石標」


命婦稲荷社、鉄輪社の入り口、堺町通西側の民家のある路地奥。




命婦稲荷社



命婦稲荷社


命婦稲荷社
 鍛冶屋町の路地奥に、小社・命婦稲荷社(みょうぶ いなりしゃ)、鉄輪社(かなわしゃ)が祀られ、傍らに井戸跡が残されている。 
 この付近はかつて、鉄輪町(かなわちょう)と呼ばれ、江戸時代までは鉄輪塚があったという。鉄輪とは、3本足の五徳(ごとく)のことで、火鉢に鍋などを掛ける際に使った鉄製の道具をいう。
 命婦稲荷社の祭神は正一位命婦稲荷大明神であり、鍛冶屋町の守護神になる。鉄輪社の祭神は鉄輪大明神を祀る。古墳稲荷、御霊稲荷になる。
 命婦稲荷社は家庭円満、福徳円満、商売繁昌の神。鉄輪社は縁切り祈願の篤い信仰がある。
◆歴史年表 創建、変遷の詳細は不明。 
 江戸時代、慶安年間(1648-1652)まで、鍛冶屋町は鉄輪町と呼ばれた。井戸の傍らには鉄輪塚があったという。
 
1668年、1666年とも、命婦稲荷社が伏見稲荷本宮より歓請され、縁結びの神になる。
 1677年、金輪墳が夕顔町の南にあり、かつて嫉妬深い女が鬼になり死んだ後に、この墳墓に葬られたという。(『金輪塚旧記』)
 1864年、焼失する。
 近代、1877年、市中の小祀廃止の府令により、町内の氏神・命婦稲荷は廃社になる。鉄輪井(鉄輪の井戸)だけは残された。
 1935年、命婦稲荷社再建の際に、土中より鉄輪塚の石碑が発掘された。このため、怨霊を鎮めるために、稲荷社の脇に鉄輪社が建立される。石碑は鉄輪大明神のご神体として祀られた。
◆鉄輪伝承 さまざまな伝承が残る。これらのは、『源平盛衰記』「剣の巻」より採られ、謡曲「鉄輪」もこれに由来している。また、宇治の橋姫伝説も脚色化された。
 堺町通松原下るに夫婦があり、妻は嫉妬深い女だった。嫌気がさした夫が外に女を囲う。妻は夫を呪い、貴船神社の丑の刻詣りを思いつく。満願前日の6日目に、妻は自宅近くの井戸の付近で絶命したという。近所の人々は妻を憐れに思い、鉄輪を用いて塚を築き祀ったという。以後、井戸は鉄輪の井と呼ばれた。井水は縁切りの効験があるとされ、遠方からも参る者があったという。(『山州名跡志』巻17)。
 丑の刻参りは、貴船神社に限らなかったという。顔に朱をさし、体に丹を塗る。頭に鉄輪を載せ、3本の角に火のついた蝋燭を立てた。口に松明を咥えて丑の刻(午前2時)に社参した。呪う相手の人形を、呪文を20回唱えながら神木に釘で打ち付け、7日目で満願になるとされた。
 謡曲「鉄輪」(伝・世阿弥作)では、下京に住んだ女が、夫に捨てられる。後妻を娶った夫を恨み、女は呪い殺そうとして貴船神社に丑刻詣りをする。その際に、鉄輪を頭に載せ、3本の足に火を灯せば、鬼になれるというお告げがあった。悪夢に苦しめられる夫は、安倍晴明に占ってもらう。祈祷の際に鬼女が現れ、夫を連れ去ろうとする。だが、三十番神に追われ鬼は去る。晴明の修法により調伏された鬼女は、この鉄輪社付近で井戸に身投げしたという。以後、鬼女の霊を弔うために鉄輪塚が築かれたという。
 江戸時代には、現在地付近にあったという「金輪墳」の話がある。夕顔町の南(堺町通松原の南)に金輪墳があった。嫉妬深い女が明神の夢告に従い、貴船川の水に浸ると鬼と化した。人々を思うままにとった。鬼は降伏させられて死ぬ。その後、墳墓に葬られたという。(『金輪塚旧記』『名所都鳥 六』『拾遺都名所図会』)
 また、かつて嫉妬深い女がいたという。この地にあった井戸「鉄輪井」に身を投じて亡くなる。その後、女の怨霊が現れるようになる。井戸近くを往来する人々に祟った。このため、鉄輪を垣に巡らし、女の霊をここに封じ込めたともいう。
◆鉄輪井 境内の「鉄輪井(かなわのい)」は、名水の一つとされた。鍛冶屋町は、江戸時代、慶安年間(1648-1652)までは鉄輪町と呼ばれていた。井戸の傍らには鉄輪塚が築かれた。
 この井戸水を縁切りしたい相手に飲ませると、縁が切れる「縁切井戸」とされた。また、新たな縁結びの神としての信仰も生まれる。
 現在、井戸水は涸れている。いまでも怨霊が宿るという。


*社殿、井戸は細い路地奥にあります。
*年号は原則として西暦を、近代以前の月日は旧暦を使用しています。

*参考文献 『京都・伝説散歩』『昭和京都名所図会 5 洛中』『稲荷信仰と宗教民俗』『京都 歴史案内』『京都大事典』『京都史跡事典』『新日本ガイド14 京都』『京都ご利益徹底ガイド』『京のしあわせめぐり55』


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命婦稲荷社

鉄輪社

鉄輪の井戸

鉄輪の井戸
 命婦稲荷社・鉄輪社・鉄輪井 〒600-8079 京都市下京区鍛冶屋町,堺町通松原下る西側
 
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